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更新日:2022年6月28日

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木造聖観音菩薩坐像

像高37.8センチメートル、木造寄木造の聖観音菩薩坐像で、梵音寺の本尊です。高い髻を結い上下に元結紐各一条を表します。頭髪には毛筋彫りを施し、髪際線はわずかに両端を波打たせます。白毫を表わし、耳朶は環状で貫通しています。条帛・裙・天衣を着け、裾は両足先までを覆います。脚部を衣文で覆うのは平安から鎌倉時代にかけて用いられた作風です。銅製宝冠の正面に化仏立像(後補)を表し、両ひじを曲げて右手は腕前で第1・2指を捻じ、左手は腹前で持物(未敷蓮華)を執り、右脚を上にして結伽扶坐しています。炎暑のインドでは水辺が理想の場であり、水面に咲く蓮の花は理想の境地の象徴でした。泥のなかにあっても泥に汚れない蓮の花は、清浄のあらわれでもあったのです。未敷蓮華(未開敷蓮華)は人間の心臓をあらわしているともいわれます。

本像は、誇張の少ない自然な量感を表わした体躯と、適度な張りのある顔の表現、ことに頬から顎にかけての肉取りに鎌倉時代慶派仏師の様式の名残をとどめています。一方で、穏やかな目鼻立ちと、頭髪や衣文表現などに認められる簡素でまとまりの良い作風は制作年代の下降を感じさせ、像内の内刳り部を深くていねいにしつらえている点に注目すると、鎌倉時代後半(14世紀前半)の制作と考えられます。慶派仏師は、鎌倉時代初期の仏師康慶・運慶の一門につらなる一派です。奈良東大寺南大門仁王像や興福寺の無著菩薩立像・世親菩薩立像にみられるような、写実性にすぐれた、当時としては個性的な作風が特徴です。その作風は鎌倉時代の仏像彫刻の主流となりました。

  • 江戸川区指定有形文化財・彫刻
  • 東葛西2丁目28番16号 梵音寺
  • 平成20年3月27日 告示

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