健康な子どもの健康な反応

「ママなんて大嫌い！」。小学校低学年、A子ちゃんの言葉です。A子ちゃんは4月に新しい学校へ転校しました。活発で学校が大好きな女の子でしたが、転校してからというもの、毎朝のように「気持ちが悪い」と言って遅刻するようになり欠席することもありました。さらにお母さんへの憎まれ口は日々エスカレートし、困ったお母さんは教育相談室を訪れました。

お母さんは、“A子ちゃんの不調は新しい環境に慣れないためだ”と考えて見守っていましたが、1か月経っても様子は変わらず、次第に焦りと不安を感じ始めました。“原因は自分の子育てによるものかもしれない”、そう思ったお母さんはいつも以上に甘えてくるA子ちゃんへ厳しい態度で接してしまうようになったのです。「ママなんて大嫌い」は、そんな中でA子ちゃんが口にした言葉です。

環境の変化や親しい人との別れ、思わぬ事故などに遭遇すると、健康な子どもは健康な反応として“心の安全弁”を作動させます。安心できる場所にこもりがちになり、ありのままの自分を親から受けとめてもらうことで安心感を得ようとします。安心感は不安に立ち向かうエネルギーとなり、子どもはそれを糧に困難を乗り越えていきます。このような時、親が必要以上に自分を責めてしまうと事態は違う問題へと姿を変え、深刻化することがあるようです。その後、安心したお母さんは余裕をもってA子ちゃんに接するようになり、A子ちゃんは元気に2学期を迎えました。

「広報えどがわ」平成23年10月1日号に掲載されました。