第4回 男性も、プレコン！　～女性も男性も、プレコンで元気な自分・元気な赤ちゃんを～

プレコンセプションケア（プレコン）連載第4回目のテーマは男性プレコンセプションケアについてです。

男性の方は、自身が妊娠をするわけではないからプレコンセプションケアは関係ないと思っていませんか？これから授かる赤ちゃんは、半分は男性のDNAを受け継いでいますので、関係ないとはいえません。また、不妊の原因は男女半分ずつですので、やはり無関係とはいえないのです。

プレコンで問題となること

特にプレコンで問題となるタバコ・肥満・男性不妊についてご紹介します。

タバコ

喫煙により精液所見が悪化したり、性交障害が起きやすくなったりして男性不妊の原因となります（注1）。“精液所見が悪くなる”とは、精子の数が減ったり、運動能力の高い元気な精子が減ったりすることをいいます。また、第1回連載でも触れたように、喫煙により将来の病気のリスク（肺がんや心筋梗塞、糖尿病など）も上昇します。さらに乳幼児突然死症候といって、予兆や病気もなく乳幼児が突然亡くなる病気は両親の喫煙がリスクの一つであり、禁煙により危険性を低くすることができるといわれています（注2）。

肥満（BMI:25以上の方）

肥満は喫煙同様に精液所見の悪化、性交障害から男性不妊の原因となることが知られています。また、第2回連載では母親の肥満が妊娠合併症（早産、巨大児など）や将来のこどもの生活習慣病のリスクとなる可能性があるとご紹介しました。実は父親の肥満もパートナーの妊娠合併症（早産など）、子どもの将来の肥満やぜんそくなどの病気のリスクとなる可能性があるという報告があります。

男性不妊

精液検査をして男性不妊がわかることがあります。精液検査では精液中の精子の数（濃度）や元気度（運動率）、奇形がある精子の割合（正常精子形態率）などを見ています。精液検査の所見が基準値（一般的にはWHOが定めたものが使われます）以下ですと、自然妊娠が難しい可能性があります。

元気な精子を保つために避けたほうがよいことがいくつかあります。精子は熱に弱いため、膝の上にPCをおいて長時間作業することやサウナに長時間いること、ぴったりした下着を着用することは元気な精子に良くありません。

その他、「精子力を高める7か条」として泌尿器科医師が解説しているホームページがありますので、参考にしてみてください（注3）。

性交障害がなければ、男性不妊の方は自覚症状がありませんので、妊娠を望むカップルがなかなか妊娠しないときには、女性だけでなく男性も一緒に検査を受けることが大切です。

精液検査は婦人科でも受けることができますので、不妊かも？と思ったらカップルで婦人科を受診しに来てください。

最後に

全4回の連載を通して、プレコンについて考えるきっかけになりましたでしょうか。女性も男性も禁煙、適正体重のコントロールなど身近なことからプレコンに取り組むことで、将来授かる子どもの健康や、将来の自身の健康につながる可能性があります。

女性も男性も、いま、始めよう、プレコン！

 

千葉大学医学部附属病院　産科・婦人科　佐藤　美香助教

参考文献

（注1）荒田尚子,三戸麻子ら.プレコンセプションケア.株式会社メジカルビュー社.2024.4

（注2）令和5年度乳幼児突然死症候群（SIDS）対策強化月間実施要綱

（注3）男性の妊活、「精子力を高める7カ条」-おむつのムーニー 公式 ユニ・チャーム