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更新日:2023年10月1日

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第7回 歯・口腔と生活習慣病

「医学の父」として知られるヒポクラテスは、紀元前400年代に抜歯により関節炎が治癒する可能性について書き残しています。それから2000年以上が経った現在の研究によって、口腔と全身疾患についての関係がさらに明らかとなっています。

歯科の二大疾患は、虫歯(う蝕)と歯槽膿漏(歯周病)です。う蝕は以前より減少傾向にありますが、歯周病はむしろ増加傾向にあります。歯周病は、日本人中高年において約80%で罹患が認められており、進行すると抜歯が必要になる場合もあります。現在では、歯を失う最大の原因は歯周病によるものです。2001年のギネスブックにも「世界で最も患者数の多い感染症」として認定されています。

みなさんは、歯周病のような歯科疾患と糖尿病などの全身的な生活習慣病の間に、密接な関係があることをご存じでしょうか?

例えば、歯周病は一部の心疾患、呼吸器疾患、動脈硬化、腎臓病、関節炎、アルツハイマー病、低体重出生など多くの全身疾患との関連をもつことが分かっています。その中でも、歯周病と糖尿病との関係については、多くの研究で関連性が指摘されています。日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドライン2019では、「2型糖尿病では歯周治療により血糖が改善する可能性があり、推奨される」、「糖尿病治療により歯周組織の炎症は改善することがある」と記載されており、歯周病と糖尿病の相互関係は一般的に知られています。

ではなぜ歯周炎が血糖コントロールを悪化させる場合があるのでしょうか?歯周病は、歯周病菌による細菌感染のため、歯周病に罹患していると、口の中に慢性的な炎症を起こしている状態になります。慢性炎症は、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きに影響を与え、血糖コントロールを難しくすると考えられます。

また糖尿病患者において歯周病が悪化しやすい原因は、唾液の量が少なくなり口の中の汚れがたまりやすくなること、白血球の機能低下が低下することにより歯周病菌に対する抵抗力が低下することなどがあげられます。このように、両者の関係の緊密さから歯周病は糖尿病の「第6の合併症」と表現されます。歯周病は、一部の生活習慣病との関連性も指摘されていますので、定期的な歯科検診・歯科受診により歯周治療を受けることが必要とされます。口の中を清潔に保つことは、ひいては糖尿病の予防や悪化防止につながると言えるかもしれません。

最近の研究で、口腔衛生状態ががん治療へおよぼす影響について注目が集まっています。例えば、がん化学療法(抗がん剤治療)では、40%程度の患者さんに口内炎、口腔乾燥、味覚障害などの口腔内症状が出現するといわれています。これらの症状により食事が摂りにくくなると、さらに体力が低下し、予定されたがん治療ができなくなることもあります。これに対して、歯科医師が介在した専門的口腔ケアによって上記の症状を未然に防ぐ、あるいは軽減できることがわかってきました。

以上より、口腔内を清潔に保つこと、これは健康寿命を延ばすことはもとより、がん治療における副作用の軽減に寄与します。

歯の健康と生活習慣病の関係イメージ

千葉大学医学部附属病院 鵜澤一弘教授(歯科・顎・口腔外科)

参考文献
糖尿病診療ガイドライン2019日本糖尿病学会編・著
口腔病巣疾患の概念と歴史相田能輝,堀田修.日本臨牀79(7):959-964,2021.
百合草健圭志,栗原絹江,大田洋二郎,他.がん患者の口腔トラブルと発生機序.看護技術52(14):10-14,2006.
山田慎一.がん支持療法としての口腔機能管理の有効性.信州医誌67⑸:279-288,2019.

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