2025年12月16日 お歳暮や年賀向け「手ぬぐい」の出荷が最盛期

国の伝統的工芸品に指定された伝統技法で製造

染色加工を営む村井染工場（代表取締役・三代目：村井光寿（むらいみつとし）63歳・一之江6丁目）では、年末年始に向けて、お歳暮や新年の贈答用などに使われる「手ぬぐい」の出荷が始まっており、染色作業などが最盛期を迎えています。

 

本区における染色業のピークは昭和30年代。中小河川が多く流れる江戸川区では、その豊富な用水を利用して浴衣などの染色業が発展しました。同工場の周辺にも30軒ほどの染色業者がありましたが、生活様式の変化や機械化などによって需要が減り、業者は年々減少。現在都内に4軒、区内には2軒を残すのみとなりました。

同工場で用いる技法は、2023年10月に国の伝統的工芸品に指定された「東京本染注染」。江戸時代に確立した伝統的な技法で、裏表同じ色柄の染色と、手作業ゆえの「ぼかし」の風合いが特徴です。工程は、初めに長尺の白布に型紙を乗せてから防染糊をヘラで糊付け。生地を屏風状に折り返しながら約40枚分繰り返した後、重なった生地にやかん（ジョウロ型の道具）で調合した染料を注いで染色します。防染糊や不要な染料を水洗いすることで、糊のついていないところが染めあがります。その後、15メートルの高さの干し場「やぐら」で自然乾燥させ、乾いた布地のしわ取りをすると完成です。12の工程からなる作業のほとんどを現在も手作業で行っており、複雑な柄によってはこの工程を何度も繰り返します。

同工場で手ぬぐいを作っているのは、光寿さんと光寿さんの次男の改（かい）さん（31歳）ら9名。光寿さんは、高校卒業後に家業の染物に携わり、この道40年以上の職人です。2006年には「東京都伝統工芸士」として認定されており、父親で先代の村井米扶（むらいよねすけ）さんから受け継がれた伝統的な技法で製造しています。今では先代と同じく、すべての工程を光寿さんが中心となってこなします。

冬晴れの青空に穏やかな陽射しが差し込んだ本日（16日）、同工場の干し場「やぐら」では、染め上げた生地を干す作業が行われ、何枚もの生地が風にはためいていました。手ぬぐいは、かさばらず使い勝手がよいという光寿さんは、「時代に流されず昔ながらの柄で作っているところが魅力です。ぜひ多くの人に使ってほしい」と話しました。

年賀贈答などに用いられる企業用名入りのものをはじめ、お祭りや行事が再開したことで発注が増えており、年末も27日まで作業は続きます。なお、同工場では受注生産と卸売りのみで小売りは承っていません。