更新日:2024年6月20日
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2024年(令和6年)6月20日 伝統工芸品「つりしのぶ」の出荷が最盛期
亡き夫の法被に想い寄せ、伝統絶やさず
軒下などに吊り下げて、暑い夏を涼やかに演出する伝統工芸品「つりしのぶ」。都内唯一の専業生産者「萬園(よろずえん/松島1丁目)」では、深野英子(ふかのえいこ/75歳)さんが亡き夫の伝統の技と想いを受け継ぎ、つりしのぶの出荷に向け、心を込めて仕上げ作業を行っています。
つりしのぶは、ヤマゴケを巻き付けた竹材にシダ植物の一種であるシノブの根茎をはわせた観葉植物。江戸時代の庭師たちがお得意様へのお中元用に作ったのが始まりとされています。乾燥に強く寒い冬を耐え忍ぶことから「シノブ」と名付けられました。コケに水を含ませると青々とした葉を茂らせ、暑い夏に涼を演出します。昭和30年代頃までは区内でも20軒ほどが生産していましたが、シノブを採取する者の減少や後継者不足などにより、現在では、「萬園」が都内唯一の専業生産者になりました。
つりしのぶを手掛けるのは、二代目の妻の深野英子さん。昭和10年(1935年)から続く同園を、昨年4月に亡くなった二代目の晃正(てるまさ/区指定無形文化財/平成22年度東京都優秀技能者知事賞受賞)さんとともに、半世紀以上守ってきました。多い時には年間で3,000個以上ものつりしのぶを夫婦で生産。素材にもこだわり、良質で丈夫なシノブを求め、2人で群馬県など関東近県の山まで出向いたこともあったと言います。今年は、東北地方から取り寄せたシノブなどを材料に、英子さんと息子さんが生産。原材料の減少もあり、150個ほどと生産は大幅に減少したものの、晃正さんが残した伝統の技と“多くの人に伝統の品を届けたい”という想いを受け継ぎ、一つ一つ丁寧につりしのぶを作り上げます。
同園で生産されるつりしのぶは、芯材を「井」の字に組んだ「イゲタ」や円筒形の木炭にシノブを巻きつけた「木炭」など約10種類。昔ながらの吊り下げて楽しむタイプやインテリアとしてテーブル上に飾れる置き型タイプなど形も大きさもさまざまで、価格も税込3千円から数万円まで。一番人気は、息子さんがつくる井桁に組み合わせた木材の中にシノブを入れた「井戸(税別2,800円)」で、売り上げ全体の5割を占める看板商品です。
出荷の最盛期を迎えた本日(20日)、同園ではご主人の法被に袖を通した英子さんが、青々と茂るシノブの葉にたっぷりと水やりをしていました。英子さんは、「シノブの採取者の減少で、先行きは見通せない」と現状を話しつつも、「伝統工芸品のつりしのぶを絶やさぬよう、できる限り続けていきたい。ぜひ手に取って、目で見て涼を感じてもらえたら嬉しいです」と話しました。
同園では、伝統工芸展や夏まつりなどに展示販売するほか、タワーホール船堀(船堀4)内のアンテナショップ「エドマチ」で販売しています。同園での販売は、事前にお問い合わせください。
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