更新日:2024年5月24日
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2024年(令和6年)5月24日 「江戸扇子」が出荷最盛期
伝統の技が光る粋な逸品
江戸時代から伝わる伝統工芸品「江戸扇子」の技を今に引き継ぐ江戸扇子工房「まつ井(北篠崎2丁目)」では、暑さの影響で例年よりも早くから注文が増え始め、連日制作に追われています。
「江戸扇子」は元禄年間に京都から江戸に伝わったのが始まりといわれ、貴族文化で誕生した繊細で雅やかな「京扇子」に比べ、粋ですっきりとした印象。約30本の骨を使用し、扇面に華麗な綿や絹が用いられる京扇子とは対照的に、江戸の町人文化で生まれた江戸扇子は、15本の竹の骨と和紙のみで制作されます。パチッと音を立ててきれいに閉じるのが特徴で、寄席などで高座扇子としても使われています。2枚の表紙に芯紙をはさんで貼り合わせて平地を作る「扇面加工」や、折り目がついた型紙で平地をはさんで折り合わせる「折り」、扇骨を通す穴を開ける「中差し」など、30以上もある制作工程を一人の職人が全て行うことで、こだわりや趣が扇子に表れるのが魅力です。
同工房で江戸扇子を制作しているのは、都内でもわずかとなった職人の一人である松井宏(まついひろし/77歳/江戸川区指定無形文化財/平成26年度東京都優秀技能者知事賞受賞)さん。昭和50年代頃までは都内に20人以上いた職人も徐々に減少し、区内では松井さんただ一人が江戸から続く伝統を守り続けています。伝統的な絵柄の扇子を制作する一方、新たな伝統工芸品の開発に取り組む事業「えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト」を通じて、女子美術大学の学生たちとコラボレーションした作品も手がけています。
今年は、暑さの影響で4月下旬頃から注文が増え始め、出荷時期は長く続き5月から8月に集中。松井さんは午前9時から遅い日は午前0時頃まで連日制作に追われています。本日(24日)も、工房では「折り」や「中差し」などの作業を行っていました。今年の売れ筋は、発売から10年以上愛され続けている「グラデーション扇子(税込4,700円から)」。あおぐ時に着物の袖に当たらないよう片側が短いデザインとなっているのが特徴で、閉じたときの扇面の美しい模様とグラデーションが目を引きます。江戸の粋を継承する松井さんと美大生の斬新なデザインアイデアから生み出された逸品です。
日々、現代に合った柄や色を意識しているという松井さんは、「楽しく大事に使ってほしいという思いで、一本一本真心こめて制作をしています。身近なSDGsの取り組みとして、多くの方に手に取っていただきたいです」と話しています。
現在は、タワーホール船堀(船堀4丁目)内の「アンテナショップ エドマチ」や篠崎文化プラザ(篠崎町7丁目)内の「江戸川区名産品販売ショップ」などで店舗販売しています。
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