更新日:2024年7月1日
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現代を生きる世代の責任を果たし 夢と希望のタスキを将来世代に
令和6年第2回江戸川区議会定例会が、6月12日から28日までの会期で開催されました。本会議冒頭に行われた斉藤区長の招集あいさつを紹介します。
「人口減少社会」の到来に日本全体が危機感
はじめに、今年の4月、民間有識者で構成される「人口戦略会議」が全国市区町村の人口の動きを分析し、大きな警鐘を鳴らしました。そこには人口減少が著しい「消滅可能性自治体」や、出生率が低く人口増加を他の地域からの流入に頼る「ブラックホール型自治体」などが記され、自治体関係者のみならず、多くの方が危機感を抱いたことと思います。
報告書の中で本区は、東京23区の約7割が指摘された「ブラックホール型自治体」には該当しませんでしたが、死亡の数が出生の数を上回る「自然減」への対策が必要な自治体とされました。
この発表の直後、とある新聞では「2100年は今年生まれた赤ちゃんが76歳になる年。遠い将来の話ではなく対策を先延ばしにする余裕もない」と論じられ、また他の新聞には「行政サービスもインフラも、人口減少に併せて作り変えねば社会がもたない。どんなアクションを起こすのか、一人ひとりに投げかけられた問いでもある」との論評が載りました。
人口減少への備えと緩和 両輪で取り組む
このたびの発表や報道を受けて、これはまさしく本区が数年にわたり投げかけてきたテーマそのものであると感じております。日本全体が今後向き合っていく問題について、かねてより区民の皆さま、区議会議員の皆さまに、人口をはじめとした将来推計をお示しし、広く意見を伺ってまいりました。
その一連の流れで、令和3年度に「ともに生きるまちを目指す条例」を制定。4年度には共生社会ビジョンを、そして5年度にはビジョンの実現に向けたアクションプランを策定してまいりました。
これまでも申し上げておりますが、これからはいよいよ、その実践に軸足を移す時であります。これは決して「人口減少の最大のリスク」に備え、今の行政サービスの内容を見直すという話だけではありません。一見すると正反対で矛盾しているように見えますが、「人口減少のリスク」に反する、つまり出生の数の増加によって人口減少を食い止める取り組みにも果敢に挑戦していく必要があります。双方を同時に進めることで現代を生きる世代の責任を果たし、夢と希望を込めたタスキを将来世代にしっかりとつないでいく考えであります。
そのために現在、本区の事務事業や公共施設の在り方について、社会状況やニーズに合うよう、そして行政サービスが将来にわたり持続可能なものとなるよう総点検を行っています。見直すべきものは見直し、踏み出すべき部分については策を講じるなど、目指す方向性を整理した後、区民の皆さまや区議会議員の皆さまにお示しし、広くご意見を伺っていきたいと考えております。
子育てするなら江戸川区 子どもの健やかな成長のために
さて、こうした将来を見据えた取り組みを進めていく一方で、目の前の課題にも積極的に対応していかなければなりません。
その一つが「子育て世帯のニーズに応える保育施設の整備」です。本区はこれまでも保育の定員数を順次拡大し、令和4年度以降、待機児童の数はゼロになっています。一方で、保護者の就労状況の変化とともに、認可保育施設の入園申込数は年々増加し、今後もその傾向は継続していくものと考えています。そこで今回、私立保育園の施設整備に係る助成に改めて着手し、保育環境のさらなる充実に努めてまいります。
これらに加えて、子どもたちが希望を持って健やかに成長していくための支援も大切です。
その一つが「学びの場の充実」です。本区はこれまでも、日々の基礎的な学習内容が身に付くよう、きめ細やかな支援を行う「小・中学校放課後補習教室」や、やむを得ず登校することが難しい児童・生徒に向けた「学校サポート教室」など、個々の状況に応じた支援を行ってまいりました。
今回これらに加えて、学ぶ意欲のある中学生が、さらにその学力を伸ばしていくための取り組みを開始します。その一つとして、成績が良好であるがご家庭の事情などにより塾へ通うことが難しい3年生に、より充実した学びの機会を提供する「EDO塾」を地域の図書館を活用して始めます。また、共育プラザでは学年に関係なく学習支援を受けられる場として、「EDO学舎」を新たに設けます。これらの事業を通じて、通っている学校と連携を図り、日々の指導に生かしてまいります。
次に、鈴木「青少年の翼」基金条例の制定です。条例の名称に名前を入れさせていただきました鈴木孝行氏は、これまでも本区に多額の寄付をしていただいております。加えて今回、3億円もの寄付を、中高生を海外に派遣する「青少年の翼」事業に頂戴しました。
その際には「子どもたちが若いうちから広い世界に目を向け、これからの人生に大きな夢を持ってもらいたい」との思いをお伺いしました。このたびいただいた寄付を元に新しく基金を設立し、鈴木孝行氏の青少年育成に対する真っすぐで熱い思いを、事業を通じて届けてまいります。
これらは総じて、子どもの成長を社会全体で育む取り組みです。その子どもたちが進む道は人それぞれに異なりますが、いざ進みたい道が見えてきたときに、夢と希望を胸に安心してチャレンジすることができるよう、しっかりとした土台づくりに力を注いでまいります。
「青少年の翼」事業でホノルル市を訪れた中高生ら
今後、財源や職員が減る中でも変わらぬ行政サービスを
さて、冒頭に述べた「人口減少社会」では区役所の財源も職員も減っていくことが予想されます。一方で、現在の行政サービスの水準をできる限り将来にわたり維持していく施策も重要です。
その一つが「メタバース区役所」の開設です。実現に向けて今年の4月に、区内にある東京情報デザイン専門職大学とプロジェクトチームを発足したところであります。今月からは福祉や教育、子育てなど一部の分野で、相談や申請手続きの受け付けを仮想空間の中で始めます。窓口やオンライン上での受け付けに加えて、皆さまの選択肢を増やすことで「来庁不要の区役所」実現への大きな一歩とし、「究極のバリアフリー」を目指してまいります。
また、先人の皆さまとともに長年をかけて育んできた、水とみどりあふれる豊かな環境を将来世代に残していくことも大切です。
現在、総合レクリエーション公園と新左近川親水公園において、持続可能な維持管理を実現し、多くの皆さまにご利用いただける公園とするため、民間企業の活力や資金を生かしたリニューアル事業を行っています。
既に一部の工事を始めていますが、お近くに住む葛西地区の方を中心に、6月5日に発行いたしました広報えどがわ特別号で、リニューアル後はどのような公園になるのか、分かりやすくお伝えしています。引き続き、区民の皆さまの声をお聴きしながら、皆さまに愛され、憩いの場となる公園の在り方を考え、取り組みを進めてまいります。
インターネット上の仮想空間にある「メタバース区役所」
広報えどがわ6月5日特別号
ビール製造・販売とともに就労機会を確保していく
また、さまざまな事情により常勤での就労が困難な方の就労機会の確保も重要です。この問題へのアプローチの一つとして「EDOGAWA BEER PROJECT」を立ち上げます。
プロジェクトの目的は、江戸川区のご当地ビールやノンアルコールビールを作ることだけではなく、生産過程の中で多くの方に働きやすい環境をつくることです。安心して就労でき、次のステップにも進めることは、当事者のみならずそのご家族の強い願いであります。
簡単なことではありませんが、事業へ込められた思いに共感する方々から消費という形で応援していただく。そのような誰もが自分らしく生きることのできる「共生社会」の理念を体現したプロジェクトに挑戦してまいります。
今年の夏はオリ・パラが開催 選手たちの活躍を期待
最後になりますが、この夏はフランスで「パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会」が開催されます。夏のオリンピック・パラリンピックと聞きますと、前回の東京大会が思い返されますが、オリ・パラ、それぞれの開会式で、当時新型コロナウイルス感染症と最前線で戦われていたエッセンシャルワーカーの皆さんが、大会旗や国旗を持って入場されました。あれから3年が経ち、コロナ禍を乗り越え、次なる大会が無事に開催されることをうれしく思います。
本日(6月12日)時点でありますが、本区ゆかりの選手として、オリンピックには競泳に池江璃花子(いけえりかこ)選手が、カヌー・スラロームには羽根田卓也(はねだたくや)選手が出場されます。パラリンピックでは水泳に辻内彩野(つじうちあやの)選手、陸上に松本武尊(まつもとたける)選手、バドミントンには長島理(ながしまおさむ)選手が出場されます。また、宗家花火鍵屋15代目当主で区の教育委員でもある天野安喜子(あまのあきこ)さんが柔道の審判員を務められます。皆さんのご活躍を期待しています。
こうしたトップレベルでの活躍も素晴らしいことですが、日々の生活の中の、文化やスポーツ活動を通じて豊かな心を育むことも大切だと思っています。
ここで区外にお住まいの方から頂戴しました、一通の手紙の内容をご紹介いたします。
「電車の車内で、東葛西中学校女子バレーボール部の皆さんをお見かけし、そのマナーの素晴らしさに大変感動いたしました。生徒たちは、互いに声をかけあいながら後輩から順に着席するよう促し、誰一人として大声でお喋りをしていませんでした。また、顧問の先生は降車まで含めて、全ての生徒にしっかりと目配りをされていました。江戸川区教育委員会の、女子バレーボール部の顧問の先生の、そして何より部員の皆さんの素晴らしさを感じました。これからも陰ながら応援させていただきます」
この手紙でお褒めいただいたようなことは、生徒一人ひとりの素晴らしさはもちろんですが、学校や家庭、そして地域の思いやりや愛情も大きく影響しているのではないかと感じております。
お子さんが活躍する場面はさまざまでありますが、これからも周囲と関わりながら成長していくことができる地域づくりを推し進めていきたいと、改めて心に誓うお手紙でありました。
区民提案の事業が寄付により実現
さて、今回提案いたします補正予算は、一般会計で総額は40億5千万円余であります。その中には、先ほど申し上げた案件をはじめ、区民の方からご提案いただいたアイデアを基に実施したクラウドファンディングのうち、目標金額を達成した「災害時に活躍するキッチンカー事業」の経費も含まれています。事業の提案のみならず、その実施経費も皆さまからお寄せいただくという取り組みではありましたが、提案者と寄付者の思いを実現すべく、防災の啓発と併せて今年の区民まつりの会場にてお披露目する予定です。
本定例会にはこれら補正予算に加え、条例改正など合計で15件の議案をお諮りしています。また、専決処分など6件の報告事項もございます。それぞれご審議の上、ご決定いただきたいと存じます。
区民の方からたくさんの提案をいただいた政策提案プレゼンテーションの様子
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