更新日:2026年2月15日
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江戸川区耐震改修促進計画(改定案)【テキスト版】
第1章はじめに
1.背景と目的
首都直下地震の切迫性が指摘される中、本区では、SDGsビジョンの目標の一つに「水害や地震に強いまちに着々と生まれ変わる」ことを掲げています。本区には、包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住の実現に向けて、より効果的な施策を計画的に実施していくことが求められています。そこで、「江戸川区耐震改修促進計画(以下、「本計画」という。)」についても、これまでの取組について評価を行い、耐震化の現状を把握するとともに、国による「建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下、「耐震改修促進法」という。)」に基づく基本方針、並びに、令和8年3月改定予定の東京都耐震改修促進計画との整合性を確保する必要があります。さらに、本計画は令和7年度末にて目標年次を迎えることから、今回の改定で耐震化の新たな目標とその達成に向けた方策を示すことで、耐震化の阻害要因となっている課題の解決、以って更なる耐震化の促進を図ります。
2.計画の位置付け
本計画は、上位計画の「共生社会ビジョン」や「SDGsビジョン」を踏まえ、耐震改修促進法第6条第1項の規定に基づき策定します。また、「東京都耐震改修促進計画(令和8年3月改定予定)」や「江戸川区地域防災計画(令和7年度修正)」等の関連計画との連携を図ります。
3.計画期間
令和8年度から令和12年度までの5か年です。
4.地震による被害等
(1)過去の大規模地震における被害の特徴
阪神・淡路大震災や東日本大震災における被害の特徴
- 阪神・淡路大震災では圧迫死と思われるもの、東日本大震災では溺死が、主な死因として最大となっており、地震によって死因には大きな違いがあります。
熊本地震や能登半島地震における被害の特徴
- 熊本地震や能登半島地震では、旧耐震基準の木造建築物の倒壊等の割合が新耐震基準導入以降の木造建築物と比較して高いことが確認されました。
- 熊本地震では、新耐震基準の木造建築物の一部においても倒壊による被害が見られ、能登半島地震でも同様の傾向が見られました。一方で、2000年基準の木造建築物の倒壊等の割合が低いことも確認されています。
(2)想定される被害
- 都は、令和4年5月、東日本大震災を踏まえ策定した「首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年公表)」及び「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定(平成25年公表)」について10年ぶりに見直し、新たに「首都直下地震等による東京の被害想定」として公表しました。
- 都心南部直下地震が発生した場合、本区の広い範囲で震度6強のゆれが予想されています。また、南部では震度7のゆれが予想されている区域もあります。
- 死者のほとんどが建物の倒壊もしくは地震火災によるものが原因とされ、負傷者についても、同様の事由が多数を占めています。
- 本区における、ゆれによる建物全壊棟数については、約6,400棟と想定されています。
5.耐震化の必要性
(1)災害に強いまちの実現
- 阪神・淡路大震災では、旧耐震基準の建築物を中心に被害が生じ、多くの死傷者が出ました。また、建築物等の倒壊により幹線道路や細街路様々な箇所で閉塞が生じ、緊急車両等の通行が妨げられたことで救助活動や復旧活動にも支障が出ました。さらに、多くの老朽化した建築物によって構成される木造住宅密集市街地で生じた火災延焼により多くの命が失われたことなども含め、大都市での地震に対する課題が顕在化しました。
- 一方、熊本地震では、大きな地震動により、旧耐震基準だけでなく新耐震基準の木造建築物の一部においても被害が見られました。なお、この傾向は、能登半島地震においても観測されています。
- さらに、国は、令和3年12月、耐震化の現状や近年の情勢等を踏まえて基本方針を見直し、令和17年度までに耐震性が不十分な住宅、令和12年度までに耐震性が不十分な要緊急安全確認大規模建築物を概ね解消することを目標に掲げました。
- こうしたことを受けて、本区においても、旧耐震基準の建築物及び新耐震基準の木造建築物に対して更なる耐震化を着実に図っていく必要があります。
- 特に、震災時における救急・救命活動、並びに、緊急支援物資の輸送等を支える緊急輸送道路沿道を始め、木造住宅が密集していて不燃領域率の低い市街地に至るまで、建築物の不燃化・耐震化による災害に強いまちの実現は、必要不可欠です。
- 建築物の耐震化は、地震による倒壊から区民の生命を守るだけでなく、災害時における居住継続性を確保した住宅の形成をはじめ、まち全体の防災力向上にもつながることから、早急に進めていく必要があります。
(2)震災時における通行機能確保
- 緊急輸送道路沿道はもとより、生活道路においても、避難路や救急・救命活動、復旧活動など欠かすことのできない数多くの機能を担っています。こうした生活道路の中には、緊急輸送道路と避難所などの防災拠点とを結ぶものも含まれています。
- しかしながら、区内の生活道路には、ブロック塀等(組積造の塀、補強コンクリートブロック造の塀、及び万年塀。以下、「ブロック塀等」という。)倒壊の可能性や道路の狭あいによる通行支障といった課題を抱える路線もあります。まち全体の防災力向上のため、建築物の耐震化と合わせて道路の通行機能確保にも取り組んでいく必要があります。
第2章耐震化の基本的な考え方
1.耐震化の基本方針
(1)耐震化の基本的な考え方
- 建築物の耐震化は、区民(建築物所有者・管理者)が自らの問題として主体的に取り組むことを基本とします。
(2)区が担う役割
- 本区は、今後も区民の生命・財産を守るため、建築物の所有者による耐震診断及び耐震改修を促進するための技術的支援や指導・助言等を行うとともに、区民への耐震化の啓発及び知識の普及に努めます。
- 本区は、公共的な観点から必要がある場合、又は、建築物所有者などの費用負担の軽減のため必要がある場合に、引き続き財政的な支援を行います。
(3)国・都等との連携
- 本計画に掲げる目標の実現のために、国、東京都、他自治体及び東京都防災・建築まちづくりセンターとの連携を図り、建築物の耐震化を引き続き促進するものとします。
(4)関係団体との連携
- 住宅の耐震化を促すため、東京都建築士事務所協会江戸川支部(江戸川建築設計協同組合)の協力を得て、耐震改修のためのコンサルタント派遣を実施します。
- 分譲マンションや緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を促進するため、本区の耐震アドバイザーである東京都建築士事務所協会江戸川支部(江戸川建築設計協同組合)との連携による相談会や個別訪問等を実施します。
- 建築関係団体との連携を密に行い、技術者の育成及び技術力の向上に努めます。
(5)地域住民等との連携
- 地域住民等に対して、広報掲示板や町会・自治会の回覧板を通じて、耐震性が不十分な建築物の危険性、耐震診断及び耐震改修等の必要性を周知します。
2.耐震化の取組の変遷
- 本区は耐震改修促進法制定前から、防災性の向上や住環境の改善を図るため、土地区画整理事業や密集住宅市街地整備促進事業等を積極的に行い、災害に強いまちづくりを進めてきました。
- 一方、建築物の耐震化の促進のためには、建築物の所有者等が自らの問題として意識して取り組むことが不可欠です。
- 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を受けて、同年10月、国は耐震改修促進法を制定しました。本区においても、平成8年度から耐震コンサルタント派遣事業を開始して、専門家による住宅の簡易診断や相談対応により、耐震化の普及啓発に努めてきました。以降、社会情勢や実態を踏まえた様々な助成制度等により、建築物の所有者等への耐震化の取組を支援してきました。
- 平成20年3月には、所有者等の取組を一層支援するため本計画を策定しました。これまで、平成28年3月及び令和3年3月に2度の改定を行い、所有者等が耐震診断や耐震改修を行いやすくなるよう、環境整備や負担軽減のための制度構築など必要な施策を講じて耐震化を促進してきました。
3.まちづくりによる耐震化の推進
本区では、市街地の整備・保全とともに建築物の更新を促進することで、災害に強いまちづくりによる面的な耐震化を推進しています。
(1)土地区画整理事業・市街地再開発事業
- 土地区画整理事業及び市街地再開発事業により、広く良好な都市基盤が整備されています。
- JR小岩駅周辺では、市街地再開発事業が1地区で完了し、2地区で事業中です。また、土地区画整理事業による道路等の基盤整備が進められています。平井駅の北口及び船堀四丁目では、市街地再開発事業が進行中です。本区における土地区画整理事業は、1,266.7ヘクタールが完了、18.1ヘクタールが事業中となっています。
(2)密集住宅市街地整備促進事業・地区計画等
- 老朽化した木造住宅が密集し、首都直下地震等が発生した場合等に延焼火災の危険性が高い地域において、密集住宅市街地整備促進事業により道路や公園を整備し、地区の防災性向上と住環境の整備を図っています。現在は、6地区(95.0ヘクタール)で完了し、9地区(409.0ヘクタール)で事業中です。
- 都の防災都市づくり推進計画に基づき、4地区の不燃化特区(南小岩七・八丁目周辺地区、松島三丁目地区、平井二丁目付近地区、南小岩南部・東松本付近地区)において老朽建築物の除却及び建替えによる不燃化を図っています。また、3地区(補助第142・143号線地区、補助第144号線地区、補助第285号線地区)において、都市防災不燃化促進事業を実施し、沿道建築物の建替えによる不燃化を促進しています。
- 地区計画は、49地区(1223.2ヘクタール)で策定済みで、ブロック塀の制限等による市街地の整備・保全が図られています。
(3)都市計画道路整備事業
- 都市計画道路は、令和7年4月1日現在、計画延長約129キロメートルのうち約104キロメートルが完成しており(完成率81%)、約13キロメートルが事業中です。
- 道路整備に伴って行われる除却・建替えにより、沿道建築物の耐震化・不燃化が促進されることで延焼遮断帯が形成されるなど、災害に強いまちづくりが進められています。
4.対象区域
本計画の対象区域は、江戸川区内全域とします。
5.緊急輸送道路
(1)緊急輸送道路
- 震災時に消防活動や支援物資の輸送、復旧・復興の交通軸となる防災上重要な道路を確保することは極めて重要です。このため、都は緊急輸送道路を指定し、建築物の倒壊等により道路閉塞を起こさないよう、沿道建築物の耐震化を促進しています。
(2)特定緊急輸送道路の指定
- 都は、阪神・淡路大震災において阪神高速道路の倒壊により並走する国道が寸断されたこと等を教訓に、平成23年3月「東京都における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例(以下、「耐震化推進条例」という。)」を制定しました。耐震化推進条例により、緊急輸送道路のうち特に重要な道路を特定緊急輸送道路として指定し、その沿道建築物に耐震診断の実施を義務付けました。
(3)耐震改修促進法上の位置付け
- 特定緊急輸送道路は、耐震改修促進法第5条第3項第2号に基づく「建築物集合地域通過道路等」として位置付けてられています。
- 一般緊急輸送道路は、耐震改修促進法第5条第3項第3号に基づく「地震時の建築物の倒壊による通行障害を防ぐべき道路」として位置付けられています。
6.対象建築物
本計画で対象とする建築物は、本区に存在する建築物のうち、原則として、次の建築物とします。
(1)住宅
戸建住宅及び共同住宅(長屋住宅、公的住宅を含む。)
- 区民の生命と財産を守るため、住宅の耐震化を促進します。
- 地震による住宅の倒壊を防ぐことで地震時における生活道路の閉塞を未然に防ぎ、円滑な避難や救急・消防活動を可能にすることで、市街地の防災性向上を図ります。
- 住宅の耐震化により震災による住宅の損傷を軽微に抑えることができれば、修復により早期の生活再建にも効果的です。
- 旧耐震基準の木造住宅においては、建物の耐火性能に課題があることも多いことから、除却・建替えによる耐震化を通じた、市街地の更新による不燃領域率向上ついても図っていきます。
- なお、公的住宅の耐震化については、平成21年度に区営住宅が完了したほか、平成24年度に東京都住宅供給公社住宅が完了しており、順調に進展しています。
(2)緊急輸送道路沿道建築物
[特定緊急輸送道路沿道建築物]
特定緊急輸送道路に接する一定の高さを超える建築物[耐震診断義務付け建築物]
- 「特定緊急輸送道路沿道建築物」は、耐震改修促進法に基づく「要安全確認計画記載建築物」として、耐震診断の実施が義務付けられています。
[一般緊急輸送道路沿道建築物]
特定緊急輸送道路以外の緊急輸送道路に接する一定の高さを超える建築物
- 「一般緊急輸送道路沿道建築物」は、耐震改修促進法に基づく「特定既存耐震不適格建築物」として、耐震診断等の実施が努力義務とされています。
(3)区公共建築物
防災上特に重要な建築物(災害拠点等)を含む区立公共建築物
- 区公共建築物は多くの区民に利用されるとともに、災害時の活動拠点や避難施設等として重要な役割を担っています。
- なお、本区においては、防災上重要な建築物を含む区が管理する公共建築物の耐震化について、平成22年度までに完了しています。
(4)民間特定建築物
[特定既存耐震不適格建築物]
多数の者が利用する一定規模以上の建築物
- 「特定既存耐震不適格建築物」は、耐震改修促進法に基づいて、「要緊急安全確認大規模建築物」を除く、多数の者が利用する一定規模以上の建築物と位置付けられており、耐震診断等の実施が努力義務とされています。
[要緊急安全確認大規模建築物]
地震に対する安全性を緊急に確かめる必要がある大規模な建築物[耐震診断義務付け建築物]
- 「要緊急安全確認大規模建築物」は、耐震改修促進法に基づいて、不特定多数の者が利用する建築物や自力での避難が困難な高齢者や乳幼児などが利用する建築物のうち、大規模なものと位置付けられており、耐震診断の実施が義務付けられています。
(5)ブロック塀等
[特定緊急輸送道路沿いの塀]
特定緊急輸送道路に接する建物に附属する一定の長さ・高さを超えるブロック塀等[耐震診断義務付け建築物]
- 本区には、「特定緊急輸送道路沿いの塀」に該当するブロック塀等はありません。
[上記以外の塀]
道路に面する一定の長さ・高さを超えるブロック塀等
- 危険なブロック塀等が地震により倒壊した場合、通行人がその被害を受けることはもとより、倒壊そのものが道路の閉塞を起こすことで避難や救急・消防活動等に支障をきたす恐れがあることから、ブロック塀等の耐震化を促進していきます。
第3章耐震化の目標
1.耐震化の基本理念
包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住の実現
2.耐震化の現状と目標
建築物の種類ごとの現状と目標を下表に示します。
| 対象建築物の種類 | 令和3年3月 改定計画 |
現状 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 令和12年度末 | 令和17年度末 | ||||
| 2000年基準の住宅 | 記載なし |
耐震化率 91.7% |
耐震化率 95% |
概ね解消 | |
| 新耐震基準の住宅[参考] | 耐震化率 97% (R2.3) |
耐震化率 97.8% (R8.3) |
ー | ー | |
| 公的住宅 | 耐震化率 98% (R2.3) |
耐震化率 99.2% (R7.3) |
ー | ー | |
| 区営住宅 | 耐震化率 100% (H22.3) |
ー | ー | ー | |
| 特定緊急輸送道路沿道建築物 | 総合到達率 98.5% (R2.3) |
総合到達率 98.6% (R8.3) |
総合到達率 99%、 95% 未満の区間を解消 |
総合到達率 100% |
|
| 一般緊急輸送道路沿道建築物 | 耐震化率 84% (R2.3) |
耐震化率 89.0% (R8.3) |
耐震化率 90% |
次回改定時 に設定 |
|
| 区公共建築物 | 耐震化率 100% (H23.3) |
― | ― | ― | |
| 民間特定建築物 | 耐震化率 96% (R2.3) |
耐震化率 96.2% (R7.3) |
耐震化率 98% |
次回改定時 に設定 |
|
| 要緊急安全確認大規模建築物 | 耐震化率 100% (R2.3) |
― | ― | ― | |
- 今回改定における耐震化率の算定に際して、国の基本方針の改正や、都の計画改定において「耐震性を満たすもの」について「新耐震基準」から「2000年基準(木造住宅は2000年基準、その他は耐震基準)」に引き上げられたこと、並びに、国の住宅・土地統計調査の精度に改善があったことなどを踏まえて、耐震化率の算定の基礎となる住宅戸数等の数値や耐震化率の推計方法に関して見直しを行っています。
- 具体的には、算定の基礎となる住宅戸数等の推計に際し、新耐震基準[参考]では、耐震化率算定開始当初(平成18年度当時の国の推計資料)の数値を基にその後の戸数増減に関して区独自の推計により算出したものを用いています。一方、2000年基準では、最新(令和5年度)の統計資料を用いた国の推計方法を基にその後の戸数増減も踏まえた都の推計方法を準用して算出したものを用いています。このため、新耐震基準[参考]と2000年基準で算出したそれぞれの耐震化率については、比較できる関係にありません。
第4章各建築物における取組
1.住宅
(1)住宅全般の現状
- 2000年基準での住宅の耐震化の現状によれば、木造戸建住宅では82.6%、木造共同住宅では83.1%、非木造共同住宅では96.0%、分譲マンションでは94.5%が耐震性を満たしていると推計されます。
- 公的住宅については、耐震化整備プログラムなどにより計画的に耐震化に取り組んできており、耐震化率は非木造共同住宅全体よりも高く99.2%となっています。
(2)戸建住宅
[現状と課題]
- 耐震コンサルタント派遣を行った住宅においては、令和6年度末時点で耐震性を満たすと確認できる住宅は存在しません。また、旧耐震住宅は最新のものでも築40年以上が経過しており、延焼防止性能にも懸念があるため、旧耐震住宅への対応は急務となっています。
- 東日本大震災の影響を受けて耐震コンサルタント派遣が増加した平成23、24年度をピークに、耐震コンサルタント派遣後に耐震改修へと進む案件が減少傾向にあります。旧耐震住宅の老朽化が進む近年においては、除却助成の申請のために耐震コンサルタント派遣を申し込むケースが多くなっています。耐震コンサルタント後の土地の状況では、建替え・除却が耐震改修実績(自費工事含む)を大きく上回っており、除却のニーズが高まっていることが確認できます。
- 令和7年度には、令和6年度までに除却助成を行った921件について、除却後の土地利用状況に関する調査を行ったところ、約8割が建替え又は建替え中となっているとともに、建替え後の建築物は、その約6割が耐火建築物又は準耐火建築物となっており、耐震化によって市街地の不燃化も促進されていることが確認できます。
- 耐震相談会については、新耐震基準の木造住宅を助成対象に加え、会場・回数ともに増やしていますが、地震発生の影響を受けた年度を除き、相談者数が伸び悩んでいます。耐震相談会は開始から15年が経過しており、広報や町会回覧板、広報掲示板等による周知を毎回行っていることから、相談会の開催そのものは広く区民に周知されてきたと考えられます。今後は、残されたすべての当事者(旧耐震基準の住宅及び新耐震基準の木造住宅の所有者等)に対し、地震発生時の危険性や耐震化の必要性、並びに同支援制度等について、より直接的に働きかけていくことが効果的であると考えられます。
- 令和7年度には専門家(建築士)による訪問調査を実施したところ、約1割の空き家(複数回訪問しても連絡が取れない不在も含めると2割強)が確認されました。耐震相談会などのプル型の支援だけではわからなかった実態が明らかとなりました。耐震相談会における相談者数の減少も踏まえ、すべての対象住宅を明らかにし、空き家・借家等の所有者特定を進め、対象住宅のすべての所有者に対して、現状に応じたきめ細かなプッシュ型支援(普及啓発含む)を進めていくことが必要であると考えられます。
[今後の取組]
- 対象となる戸建住宅の所有者に対して、所有者による主体的な耐震化の取組を促進するため、住宅耐震化緊急促進アクションプラグラムの改定を行い、積極的な施策の推進を図ります。
- 耐震コンサルタント派遣については、これまでの実績から、除却を希望する旧耐震基準の木造住宅に関しては、耐震性を満たすものが確認できなかったことを踏まえ、除却助成の要件から「耐震コンサルタント派遣実績があること」を外し、耐震コンサルタント派遣は、耐震改修に向けた相談に対象を限定することで、きめ細かな対応と耐震化に向けた支援を進めていきます。
- 耐震改修に関する各種助成ついては、引き続き耐震改修を促進するための支援策として継続します。令和6年度から令和7年度までの2年間限定として増額していた耐震改修工事助成額については、工事費の高騰が依然として続いていることから、令和8年度以降も継続することで、更なる耐震改修の促進を図ります。また、低コスト工法の推進により、資金難や高齢化による移転難に対する負担軽減を図ることで、効果促進を図ります。
- 老朽住宅除却助成については、平成30年度に制度を開始して以降、高い水準で利用されているものの、助成額の拡充は実施されておらず、工事費の高騰により年々自己負担割合が増加する傾向にあることから、除却の効果(建替えによる不燃化の促進)も踏まえた更なる耐震化の促進に向けて、地区や対象を限定して助成額を拡充するなどの検討を推進します。
- 普及啓発については、固定資産税の課税台帳を持たない本区において、これまで、国等の統計資料から対象住宅の概数を把握することや、確認申請の実績から対象住宅であるか否かの確認をすることで、対象住宅の現況を把握してきました。プッシュ型支援の必要性が高まってきたことを始め、耐震化率が一定程度上昇し対象住宅が減少しつつある状況やGISの汎用性が高まってきたことを踏まえ、国や都とも協力しながら対象住宅及び同所有者を特定し、普及啓発や耐震化に関する課題の調査・対応により耐震化の促進に効果を反映していきます。特に、新耐震基準の木造住宅については、地震時の倒壊・大破の可能性が指摘されているものの、その危険性に関して十分に認知されていない可能性が高いことから、まずは所有者自ら行う安全点検等の普及・推進を図ります。
- 都と連携し、耐震改修に関わる設計者や工事施工者向けに、耐震改修工法に関する情報提供や改修事業者講習会を共催することで、引き続き、耐震改修促進に必要な環境整備や技術支援を行っていきます。
(3)分譲マンション
[現状と課題]
- 区分所有者間の合意形成が難しいとされる中で、耐震化の普及啓発を継続して促してきた結果、これまで70組合(158棟)が耐震診断を実施し、20組合(48棟)が耐震改修不要となり、26組合(67棟)が耐震改修工事を実施、2組合(2棟)が除却しました。現在、48組合(117棟)で安全安心が確保され、取組が必要な分譲マンションは残り56組合(78棟)となっています。
- 耐震診断未実施が34組合(37棟)、診断を終えているものの耐震改修等が進んでいないものが22組合(41棟)あります。これらの分譲マンションの管理組合に対して、耐震診断・耐震改修設計・耐震改修工事助成の活用を引き続き働きかけるとともに、相談体制や支援の強化を図る必要があります。
[今後の取組]
- 戸建住宅同様、管理組合等の所有者による主体的な耐震化の取組を促進するため、住宅耐震化緊急促進アクションプラグラムの改定を行い、積極的な施策の推進を図ります。
- 耐震改修に関する各種助成については、引き続きこれらの制度について継続し、管理組合等による分譲マンションの耐震化促進を図ります。分譲マンションの耐震化は戸建住宅と比べて規模が大きく合意形成の困難さが課題のひとつとなっていることから、支援制度について管理組合だけでなく全居住者に周知徹底するなど、各種制度が効果的に活用されるよう、合意形成の土台から支援を展開します。
- 本区では、令和2年度から制度化されたマンション管理状況届出について対象の全分譲マンションから提出されていることから、同制度と連携し、継続的な個別訪問により働きかけを行っていきます。また、管理組合向けに、専門家(建築士及びマンション管理士)による相談会を新たに開催します。
- 今後は、高経年の分譲マンションも増加していくことから、耐震化の方策のひとつとして、建替えや除却に関する支援体制の整備を図ります。
(4)民間賃貸住宅
[現状と課題]
- 民間賃貸住宅は、所有者が当該住宅に居住していないことも多く、耐震化の必要性や各種支援制度について、所有者への十分な周知ができていない可能性があります。また、対象住宅が相当数あることが統計上明らかであるものの、その位置や所有者は把握できていません。まずは、対象となる住宅を調査するとともにこれらの所有者の特定を進め、このうち助成対象の所有者に対しては、普及啓発を進めていくなど優先順位を付した対策が必要であると考えられます。
[今後の取組]
- 対象となる住宅の総数が大規模であることから、優先順位を付して着実に取組を進めていく必要があるため、助成制度が確立されている個人所有の木造賃貸住宅の位置と所有者を特定し、普及啓発や各種支援制度の案内、並びに、個別訪問等を通じて耐震化の促進を図ります。その他の住宅に関しても引き続き対策の検討を進めていきます。
(5)公的住宅
[現状と課題]
- 公的住宅の耐震化率は、99.2%となっており、概ね完了を迎えようとしています。
- 計画に予定されている耐震化を着実に促進する必要があります。
[今後の取組]
- 引き続き、それぞれの住宅管理者が計画に基づき、耐震改修工事や建替え、除却による耐震化の促進を図ります。
2.緊急輸送道路沿道建築物
(1)緊急輸送道路沿道建築物全般の現状
- 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率は、平成18年度末時点と比較して大きく上昇しており、耐震化が進展しています。
- 一般緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率は、上昇しているものの、特定緊急輸送道路沿道と比較すると進展に課題があります。
(2)特定緊急輸送道路沿道建築物
[現状と課題]
- 本区の特定緊急輸送道路沿道で高さが道路幅員の概ね2分の1を超える建築物で、旧耐震基準で建てられたものは、61棟(令和7年度末)です。
- これまで、60棟が耐震診断を実施し、うち6棟が耐震改修不要でした。その結果、耐震改修が必要となった54棟のうち21棟が耐震改修工事を実施、18棟が建替又は除却を実施した結果、特定緊急輸送道路沿道建築物(旧耐震基準以外の建築物を含む、高さ該当するすべての建築物)の総棟数439棟のうち423棟が耐震性を満たすこととなりました。耐震化率は、令和7年度末時点で96.4%となっています。
- 耐震性が不明又は不十分な建築物は16棟となりますが、1棟が未診断、15棟が診断を終えているものの耐震改修等を実施していない状況であることから、引き続き所有者や管理組合等への積極的な働きかけを行い、相談体制の強化を図る必要があります。
- 特に、蔵前橋通りの一部においては未耐震等の建築物が集中していることから、特定緊急輸送道路の確実な機能確保に向けて早期耐震化が必要です。
[今後の取組]
- 耐震改修に関する各種助成については、引き続きこれらの制度について継続し、所有者又は管理組合による建築物の耐震化促進を図ります。
- 旧耐震建築物については、建築から経年しており、所有権が移転(売買・相続等)されていることも珍しくありません。建築物の現在の所有者等について定期的に確認するとともに、継続的に訪問して耐震化の必要性や支援制度の活用について繰り返し情報提供を行うことで、早期耐震化を図ります。
(3)一般緊急輸送道路沿道建築物
[現状と課題]
- 本区の特定緊急輸送道路沿道で高さが道路幅員の概ね2分の1を超える建築物で、旧耐震基準で建てられたものは、107棟(令和7年度末)です。
- これまで、44棟が耐震診断を実施し、うち7棟が耐震改修不要でした。さらに、4棟が耐震改修工事を実施、24棟が建替又は除却を実施した結果、一般緊急輸送道路沿道建築物(旧耐震基準以外の建築物を含む、高さ該当するすべての建築物)の総棟数654棟のうち582棟が耐震性を満たすこととなりました。耐震化率は、令和7年度末時点で89.0%となっています。
- 耐震性が不明又は不十分な建築物は72棟となりますが、63棟が未診断、9棟が診断を終えているものの耐震改修等を実施していない状況であることから、引き続き所有者や管理組合等への積極的な働きかけを行い、相談体制の強化を図る必要があります。
- 特に、一般緊急輸送道路沿道建築物は特定緊急輸送道路沿道建築物と比較して未診断の建築物が多く、また、耐震化を図る必要がある建築物が複数の路線かつ広範囲に分布しているため、取組強化を図る必要があります。
[今後の取組]
- 耐震改修に関する各種助成については、引き続きこれらの制度について継続し、所有者又は管理組合による建築物の耐震化促進を図ります。特に、一般緊急輸送道路沿道建築物においては未診断の建築物も多いことから、積極的な普及啓発により早期の耐震診断実施を推進します。
- 旧耐震建築物については、建築から経年しており、所有権が移転(売買・相続等)されていることも珍しくありません。建築物の現在の所有者等について定期的に確認するとともに、継続的に訪問して耐震化の必要性や支援制度の活用について繰り返し情報提供を行うことで、早期耐震化を図ります。特に、耐震化の必要性について所有者又は管理組合への積極的な個別訪問や相談会の実施により普及啓発を行うなど、相談体制の充実を図ります。
(4)緊急輸送道路の指定状況、並びに、到達率による評価指標について
[現状と課題]
- 都は、平成23年4月に耐震化推進条例を施行しました。特に耐震化を推進する必要がある路線を特定緊急輸送道路として指定し、沿道建築物の耐震診断を義務付けました。本区においては9路線(45.2キロメートル)が指定されました。加えて、国は、平成25年11月に耐震改修促進法を改正し、法においても耐震診断を義務付ける建築物(要安全確認計画記載建築物)を定めました。
- 都は、令和2年3月の都耐震改修促進計画一部改定に際して、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化と道路機能確保に係るシミュレーションを導入しました。特定緊急輸送道路の通行機能を的確に表せる指標として区間到達率及び総合到達率を用いて、目標設定を行っています。なお、本区では蔵前橋通りの一部及び千葉街道(東小松川交差点から区役所間)の区間到達率に課題を抱えています。
[特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化と道路機能確保に係るシミュレーションと今後の取組]
- 今後は、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の状況について、区間到達率及び総合到達率を用いた評価も行っていきます。なお、これまで都が算定してきた総合到達率においては特定緊急輸送道路のみを通行でき、一般緊急輸送道路へのう回等をしない想定でありましたが、都がネットワーク強化区間の取組による通行機能の改善評価を反映するシミュレーションを実施することとなったことから、本区においても同様の評価方法を採用します。
- 最小限の改修棟数で特定緊急輸送道路全体の通行機能が強化可能となる重要な区間(蔵前橋通りの一部及び千葉街道(東小松川交差点から区役所間))において、個別訪問を繰り返し行い、耐震アドバイザー派遣等を活用した耐震化につなげるなど、伴走型の支援を実施します。
3.区公共建築物
[現状]
- 区が管理する建築物(防災上特に重要な区立公共建築物等を含む)については、耐震化が完了しています。
4.民間特定建築物
[現状と課題]
- 旧耐震基準の建築物は、34棟と推計されています。所管行政庁や関係団体の働きかけにより耐震化が進捗し、うち24棟が耐震性を満たすと推計されています。その結果、令和6年度末においては、総棟数が264棟のうち、254棟が必要な耐震性を満たしていると見込まれます。
- また、国は、平成25年耐震改修促進法の改正により、病院・店舗・老人ホーム等で大規模なものを「要緊急安全確認大規模建築物」として指定しています。本区においては10棟が該当し、すべて耐震診断を実施済みです。
- 利用者がいる中での耐震改修を行う負担等を把握したうえで、建築物所有者の主体的な取組を促すよう、専門家の団体や行政機関等と連携する必要があります。
[今後の取組]
- 建築基準法に基づく定期報告制度と連携するなど、建築物の現在の所有者等について定期的に確認するとともに、所有者等に対して耐震化の必要性や支援制度の活用、並びに、耐震改修工法等について繰り返し情報提供を行うことで、早期耐震化を図ります。
5.ブロック塀等
[現状と課題]
- 令和6年度までに、ブロック塀等撤去費助成制度を活用し、倒壊の恐れのあるブロック塀撤去を行った延長は4,866.0メートルです。
- 倒壊の恐れのあるブロック塀等は現在も多く残っており、歩行者への被害等が懸念されます。
- 区公共建築物において、道路に面した倒壊の恐れのあるブロック塀等は、対策が完了しています。
[今後の取組]
- 建築物の耐震化と組積造の塀の解消は、物件所有者が重複する場合などが多分に考えられるため、ブロック塀等撤去費助成について、庁内の情報共有や連携により耐震化促進を図ります。
6.安全対策等の関連施策
[現状と課題]
- 家具転倒防止金具取付ボランティアについては、令和6年度末までの支援実績が1,300件以上となります。
- 建築物における安全対策は、所有者等の主体的な取組が重要になってくることから、所有者等に対して情報提供や意識啓発、必要に応じた指導・助言等を行っていく必要があります。
[今後の取組]
- 建築物の落下防止対策については、ガラスやタイルなどが落下する恐れのある建築物や大規模空間を有する建築物の所有者等に対して、建築基準法に基づく定期報告の機会等を利用して、引き続き、指導や助言を行っていきます。
- エレベーターの閉じ込めに関しては、所有者等に対して、建築基準法に基づく定期報告の機会等を利用して、機器の耐震性強化や地震時管制運転装置等の防止対策について、引き続き、指導や助言を行っていきます。
- 液状化対策については、建築物の基礎で対応する工法と、地盤を改良して対応する工法とがあり、建築物の建替え時に予防的対応が図られます。本区は、東京都土木技術支援・人材育成センターによる「東京の液状化予測図」や東京都都市整備局による「建物における液状化対策ポータルサイト」を案内し、引き続き、所有者等の自主的な取組を促進していきます。
- 家具転倒防止対策器具の設置については、適切な方法が求められることから、「家具の転倒防止ボランティア」を引き続き支援していくとともに、東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」等を案内し、居住者等の自主的な対策を促進していきます。
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