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更新日:2022年8月15日

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未来へのヒント 第12回 渡部 陽一さん(戦場カメラマン)

CCBY 但し、画像データは除きます

 

 

日本にとっては戦後77年を迎える今年、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が起き、国際社会による恒久の平和への歩みはいまだに道半ばであるという現実が突き付けられています。多数の紛争地域を取材し、このほどウクライナから帰国したばかりの戦場カメラマン・渡部陽一さんは、“相手のことを知る”ことが平和にとって、さらには共生社会にとってもカギになると指摘します。

―戦闘の続くウクライナでの取材から戻り、改めて渡部さんが伝えたいことは?

僕は戦場カメラマンとして30年にわたり世界中の紛争地をまわってきたのですが、どの戦争でも変わらなかったのは、“戦争の犠牲者はいつも子どもたちである”ということ。紛争地に取り残され、命の危険を感じながらおびえて暮らす子どもたちがいることを報じなくてはならない――。もともと僕がカメラを持って紛争地に足を運ぶようになったのは、そんな思いからです。
紛争地というと、皆さんがテレビなどでよく目にするのは銃撃戦や空爆などのインパクトのある光景だと思います。しかし、そのすぐそばに、食卓を囲む家族、愛情を込めて赤ちゃんの世話をする母親、学校や仕事に向かう人々がいるということは珍しいことではありません。戦地でのそうした場面を写真で伝えることで、海外での紛争が皆さんと関係のない遠い国の出来事ではないと気付いてほしいのです。

―私たちが平和のためにできることは?

日本では戦争の終結から時が経ち、戦争の記憶も少しずつ風化していくかもしれません。しかし、戦争の悲しい記憶は必ず次の世代に継承していかなければなりません。そのために一番重要なことは、平和に関する活動を継続すること。
江戸川区では毎年、地域の方々が主体となって灯籠流しや慰霊碑への献花などを行っていると聞きました。これらはとても尊い活動で、これからもずっとずっと続けてほしいと思います。

―海外での取材活動を行う上で心掛けていることは?

取材は、被写体となる地域の人々や、現地のガイド、通訳、セキュリティーの人たちとのコミュニケーションが必要不可欠です。彼らと信頼関係を構築していくに当たり大切にしているのは、その国・地域の生活習慣や文化、宗教観に土足で踏み込まず、敬意を払うこと。相手を知る努力を欠かさないことも大切です。
例えば、現地で出会った人にはその国の言葉であいさつをしてみる。それだけでも、相手の緊張が解けて気持ちが柔らかくなっていくのが分かります。現地の人が持つ宗教観にどのような歴史的背景があるかを学び、理解を深める。そんなふうに、現地の人が大切にしていることを僕自身も大切にすることで、少しずつ受け入れてもらい、信頼関係の土台がつくられていくんです。
これは、日本に来ている外国人とコミュニケーションを取るときも一緒です。彼らの言葉であいさつをしてみる、彼らの行動の背景を知るためにふるさとの生活・慣習を調べてみる。相手を尊重し、理解し、歩み寄ることからコミュニケーションは始まるのだろうと思います。


渡部さんが撮影した、破壊されたロシア軍戦車
(ウクライナの首都キーウ郊外)

―渡部さんが考える共生社会とは?

江戸川区には多くの外国人が暮らしていますが、それには理由があると思います。羽田空港と成田空港、どちらからもアクセスがよく、外国人が暮らしやすい良質なコミュニティーが発展しているからです。今後、江戸川区は外国人にとって日本のゲートウエー(玄関口)となり、多くの外国人が住むことで世界各国とのネットワークが生まれ、いずれインターナショナルシティー(国際都市)に発展していくのではないでしょうか。そのため、江戸川区の子どもたちには将来、コスモポリタン(国際人)になって、世界中の人々を出迎えてほしいですね。

帰国した日本はまるで夢の国 相手を知り、誰にでも優しさを

そんな江戸川区が「ともに生きるまち」を目指していること、とてもすてきなことだと思います。ぼくが考える共生社会とは、「選択肢の多い社会」です。国籍も性別も障害の有無も関係なく、誰もがさまざまな選択ができ、活躍の幅が広がる社会です。現在、江戸川区で作成している2100年と2030年のビジョンは、このような社会をつくるための土台となるものとして期待をしています。
僕は、いつも紛争国から帰国すると、日本がまるで夢の国のように感じます。外を自由に出歩き、勉強や仕事に打ち込むという日本では当たり前の日常は、世界の人が求める平和の姿です。この幸せがいつまでも続くよう、相手を知り、誰に対しても優しさを持って接しながら、平和な未来に向けて歩いていきたいですね。

共生社会とは「選択肢の多い社会」

Profile
静岡県出身。学生時代から世界の紛争地域を専門に取材を続け、イラク戦争での米軍従軍取材の他にルワンダ内戦、コソボ紛争、チェチェン紛争、ソマリア内戦、アフガニスタン紛争などに赴く。初代・富士市観光親善大使。

江戸川区の共生社会の情報発信サイト「TOMONI(ともに)」では、渡部陽一さんの他、先進的な取り組みを行う企業、専門家、研究者などさまざまな方のインタビューをお届けしています。

問い合わせ 共生社会推進係 電話:03-5662-0091

このページに関するお問い合わせ

このページはSDGs推進部広報課が担当しています。

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