更新日:2022年6月15日
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未来へのヒント 第10回 アグネス・チャンさん(歌手・エッセイスト)
歌手、エッセイストとしての活躍はもちろん、ボランティア活動や日本ユニセフ協会大使としての活動も印象深いアグネス・チャンさん。これまでさまざまな国・地域を訪れ、貧困に苦しむ子どもたちに手を差し伸べてきた経験と、未来に対する想いを伺いました。
Profile
歌手、エッセイスト、教育学博士。香港生まれ。1972年に「ひなげしの花」で日本デビューを果たす。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学で社会児童心理学を専攻し卒業。その後、米国スタンフォード大学博士課程に留学し、1994年に教育学博士号を取得。1998年に日本ユニセフ協会大使、2016年にはユニセフ・アジア親善大使に就任するなど、紛争地域への訪問やチャリティーなどさまざまな社会貢献活動を行っている。
「声にならない声」を代弁することが私の役割
―日本ユニセフ協会大使に就任する時は、どんな心境でしたか?
ユニセフから「私たちは、一番弱い子どもたちの声になりたい。だから一緒に活動してくれませんか」と言われて、この言葉にとても感動して、声なき声の代弁者にならなきゃいけないと思いました。
2003年にイラクを訪問した時、当時はイラク戦争が終結したばかりで、国民は食糧難になり、子どもたちはいろんなものを売って家計を助けようとしていました。ある男の子から梨を買った翌日、また同じ少年に出会ったのですが、私はその時財布を夫に預けていてお金を持っていなかったんです。事情を伝えると、少年は「今日はタダでいいです」と梨を差し出すんですよ。もらえないと伝えても、「遠慮はいらない。困ったときはお互いさまだから!」って。それで受け取って食べたのですが、この世の中で、あれ以上においしかった梨はありません。一番困っている人たちが一番優しいって本当なんですね。だからこそ、チャンスを与えてあげたい。内に秘めた力を引き出せる方法を探して、支援していきたいと強く思います。
―私たちはまずどんなことをすれば良いと思いますか?
私は常々、「知ることが力になる」と思って活動をしています。今すぐに具体的にできることがなくても、貧困で苦しむ世界中の子どもたちの存在について知り、周囲の人とそれについて会話してくれたら十分です。そうしたら、いざというときに自然と体が動くと思うんです。
そのためにも、教育現場で日本の子どもたちに現状を伝えていくことがとても大事だと思います。貧困に苦しむ子どもたちの存在を知って興味や関心を抱き、家で親に話す。子どもの話から親も関心を持ち、それが社会に広まっていくというサイクルができたらなと。親が「こうしなさい」というのではなく、子どもが自発的に動いて循環していくことが理想です。
―近年問題になっている”日本の貧困”についてどう思いますか?
日本の貧困は、目に見えにくいことが一番の問題です。人に迷惑をかけてはいけないと思って、親も子も助けを求めないんですね。まずは、この状況を変えなければいけません。「もう少し頑張りたいから助けて」って言ってほしいし、それを聞いた周囲の人は「自己責任だ」みたいな責め方をしないでほしいです。
一方で、困っている人の身になった支援も必要だと感じます。例えば、江戸川区で実施されている「子ども食堂」や「おうち食堂」などの食事支援。これは、自分の子どもに普通の生活を提供できずに苦しんでいる親の気持ちを丁寧にくみ取った優しい支援方法だなと思います。
社会全体を明るい未来へとシフトしていくためには、子どもたちの力が不可欠です。若い世代の力を育てるためにも、江戸川区全体で区民同士が支え合ってほしいなと思います。
江戸川区の共生社会の情報発信サイト「TOMONI(ともに)」では、アグネス・チャンさんの他、先進的な取り組みを行う企業、専門家、研究者などさまざまな方のインタビューをお届けしています。
問い合わせ 共生社会推進係 電話:03-5662-0091
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