障害のある人が自分らしく暮らせるまち条例 令和五年十一月六日条例第三十九号     全ての人は、障害の有無にかかわらず、自分らしく生きる権利を生まれながらに持っており、かけがえのない存在です。 我が国では、障害者の権利に関する条約の採択をきっかけに、障害のある人の人権を守るための法律が整えられてきました。 しかし、障害のある人は、今なお、日常生活や社会生活のあらゆる場面で、建物や設備、制度の利用に不便を感じたり、偏見、無関心など、障害による差別に苦しんだりしています。 また、十分な理解や尊重がないために、自分の思うような生活ができないなど、様々な生きづらさを感じながら暮らしている人がいます。 これらの生きづらさは、心身の機能の障害のみならず、社会における様々な障壁によって作り出されています。 このような状況を変えていくためには、誰もが地域の一員として、障害に対する正しい理解を深め、障害のある人の立場に立って、この障壁を取り除いていかなければなりません。 そして、障害のある人を日常的に支援し、悩みや苦しみを抱え孤立している家族などの支援も必要です。障害のある人への差別を解消し、一人ひとりの権利が尊重され、能力が十分に発揮される社会は、全ての人にとって、暮らしやすい社会になります。  江戸川区は、障害者の権利に関する条約、ともに生きるまちを目指す条例などの考えをもとに、国や国際社会とも呼応し、障害の有無によって分け隔てられることなく、誰もが安心して自分らしく暮らせるまちの実現を目指し、この条例を定めます。 (目的) 第一条 この条例は、障害及び障害のある人に対する理解を促進し、障害を理由とする差別を解消するための施策について、基本理念を定め、江戸川区(以下「区」という。)及び事業者の責務並びに区民等の役割を明らかにすることにより、社会的障壁を取り除き、もって、障害の有無によって分け隔てられることなく、誰もが安心して自分らしく暮らせるまちを総合的かつ計画的に実現することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける等の生きづらさを抱えている状態にあるものをいう。 二 区民等 江戸川区内(以下「区内」という。)に住み、又は区内で働き、若しくは学ぶ者その他区内で活動する者をいう。 三 事業者 区内において事業活動を行う法人、団体及び個人をいう。 四 社会的障壁 障害のある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 五 合理的配慮 障害のある人が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 六 意思決定支援 障害のある人が自ら意思を決定すること(以下「自己決定」という。)が困難な場合において、可能な限り自らの意思が反映された日常生活又は社会生活を送ることができるよう、自己決定を支援することをいう。 (基本理念) 第三条 障害のある人が安心して自分らしく暮らせるまちの実現に向けた取組は、次に掲げる事項を最大限尊重して推進するものとする。 一 障害のある人において、等しく基本的人権を享有する個人としての尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 二 障害のある人において、自分らしさ及び自己決定が尊重され、円滑に意思決定支援を受けられること。 三 障害のある人が、障害を理由とする差別によって、その権利利益が侵害されないこと。 四 障害のある人が、地域社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 五 障害のある人が、可能な限り、自らの希望する場所で、安心して自分らしく暮らすことができること。 六 区、区民等及び事業者が連携し、障害のある人が、その障害の特性及び生活の実態に応じて、個人の能力及び個性を発揮できること。 七 障害のある人において、その性別、年齢、状態等に応じた適切な配慮がなされること。 八 障害のある人も障害のない人も、相互に理解し、多様性を認め合い、自分らしくいられること。  九 障害のある人が、可能な限り、言語(手話等を含む。以下同じ。)その他の意思疎通のための手段(点字、拡大文字、筆談、音声読み上げ、平易な言葉その他意思疎通に困難がある人において意思疎通をしやすくするためのあらゆる手段を含む。以下同じ。)についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段について選択の機会の拡大が図られること。 十 障害のある人及び日常生活又は社会生活を支える家族等が孤立しないよう、適切な配慮がなされること。 (区の責務) 第四条 区は、前条に規定する基本理念に基づき、障害のある人が安心して自分らしく暮らせるまちの実現に向けた施策を総合的かつ計画的に実施する。 2 区は、区民等、事業者、国及び他の地方公共団体その他の関係機関と連携し、協力して障害のある人が安心して自分らしく暮らせるまちを推進する。 (区民等の役割) 第五条 区民等は、障害及び障害のある人に対する理解を深め、家庭、職場、学校、地域等の活動において、障害のある人が安心して自分らしく暮らせるよう配慮に努める。 2 区民等は、区が実施する障害のある人が安心して自分らしく暮らせるまちを実現するための施策に協力するよう努める。 (事業者の責務) 第六条 事業者は、障害及び障害のある人に対する理解を深め、家庭、職場、学校、地域等における活動において、障害のある人が安心して自分らしく暮らせるよう配慮に努める。 2 事業者は、区が実施する障害のある人が安心して自分らしく暮らせるまちを実現するための施策に協力するよう努める。 (差別の禁止等) 第七条 何人も、障害のある人に対して、障害を理由とする差別等その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 2 区及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害のある人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要な合理的配慮をしなければならない。 (推進施策) 第八条 区は、この条例の目的を実現するため、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に行う。 一 障害のある人が、等しく基本的人権を享有する個人としての尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活が保障されるための施策 二 障害のある人が、自分らしさ及び自己決定が尊重され、円滑な意思決定支援を受けられるための施策 三 障害を理由とする差別解消に向けた施策 四 障害のある人が、地域社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が提供されるための施策 五 障害のある人が、可能な限り、自らの希望する場所で、安心して自分らしく暮らせる環境を整備するための施策 六 区、区民等及び事業者が連携し、障害のある人が、その障害の特性及び生活の実態に応じて、個人の能力及び個性を発揮できる環境を実現するための施策 七 障害のある人において、その性別、年齢、状態等に応じた適切な配慮がなされるための施策 八 障害のある人も障害のない人も、相互に理解し、多様性を認め合い、自分らしくいられる社会の推進のための施策 九 障害のある人が、可能な限り、言語その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段について選択の機会の拡大が図られるための施策 十 障害のある人及び日常生活又は社会生活を支える家族等が孤立しないよう、適切な配慮がなされるための施策 (施策推進に当たっての意見の聴取) 第九条 区は、前条の施策の推進に当たっては、障害のある人、家族等、支援に当たる関係者その他区民等の意見を聴取し、施策に反映するよう努めることとする。 (災害対応における配慮) 第十条 区は、区民等及び事業者と協力し、災害等への対応(災害発生に備えた平常時の対策を含む。)において、障害のある人の特性に十分配慮する。 (変化への対応) 第十一条 区は、将来の環境及び社会的な状況の変化に対応していくため、必要に応じて、この条例の内容を見直すこととする。 (委任) 第十二条 この条例に定めるもののほか、条例の施行について必要な事項は、江戸川区長が別に定める。 付則 この条例は、公布の日から施行する。